タイポグラフィ年鑑

この気持ちを言語化することによって前に進みたいと思う。

タイポグラフィ年鑑という、いわゆるデザインの賞がある。日本タイポグラフィ協会というNPO法人が主催しているもので、毎年1年に1回公募があり、その公募の中から選ばれたデザインが掲載された年鑑が発行される。毎年1000点を超える応募作品の中から入選作品が選ばれ、そしてさらにその中から選ばれた作品に賞が授与される。詳しくは下記URLを見ていただければと思う。

昔から、グラフィックデザインやロゴデザインに関わる人のポートフォリオを見ていると、経歴に「20××年 日本タイポグラフィ年鑑入選」と記載されているのをよく見かけた。なのでベテランのデザイナーの人の間では有名な賞なのだろうとぼんやり認識はしていたけど、自分からそれ以上触れることはなかった。

転機が訪れたのは2021年で、その年は自分にとっての飛躍とまでは行かないけれど、なんだかクリエイティブの波に乗っていた年だと思っていて、自信に溢れていたので、その波に乗って「タイポグラフィ年鑑に応募してみよう!」と思い立った。初めての応募で右も左も分からなかったが、自信のある2作品に絞って応募した。

入選通知は黄色の封筒の中に入れられて郵送されてくるのだが、落選すると何の連絡もないらしいということは応募してから知った。入選通知を発送したという公式アナウンスの後、待てども暮らせども自分の元に封筒は来なかった。地域差によって届く日数の違いもあるため、本当に落ちたのか分からないまま、数日やたらとポストやバイクの音を気にする日々が続いた。3日以上が経過し、じわじわと「落選したんだ」という悔しさが込み上げてきた。Twitterのタイムラインを見ると、入選した人の喜びのツイートで溢れていて、落ちた自分との明確な境目が分かるようで分からなくて、今までに経験したことのない気持ちになった。

それから1年が経ち、去年は様々な事情でメンタルがズタボロだったのもあり、2年連続であの悔しい気持ちを味わいたくない、今味わうと再起不能になると思って応募は避けた。応募する時のドキドキ感、もしかしたら入選しているかもというワクワク感、早く入選通知が来ればいいのにと思っていたけどいざ来なかった時の「もうこれで終わったんだ」というあっさりしているようで深い絶望感が想像以上に堪えたのであった。

その傷もようやく癒えてきた今年。初挑戦の時のような自信満々感はもはや消え去り、「どうせ落ちるのだから一か八か応募してみよう」と、はなから諦めた気持ちで応募をすることにした。どの作品も自分とクライアントさんで向き合って作ってきた大切なものであるが、そういった裏の事情はこういった審査では考慮されない。単純に、見たものが全てなのだろうと思う。

そして、今日。昨日入選通知を発送したという公式アナウンスが発表された。が、以前応募した時から、「入選通知が発送される前に入選した人にだけ通知のメールが届くらしい」という風の噂を小耳に挟んでいた。今日、メールが届いたという人を数人見かけたので、その時点で「あ、落ちたんだな」と察してしまった。自分の元にはアイドルのファンクラブのメールマガジンとIT企業のプロモーションのメールしか届いていない。

これでもし入選していたらびっくりするけど、今のところその線は限りなく薄いと思うので、早々に期待する気持ちに区切りをつけて、前に進みたいと思う。審査の基準などは明言されていないので、自分の作品を客観視することは難しいけれど、目標は遠い方が頑張れるので、いつの日か幸せの黄色い封筒が来る日を想像して、また仕事に励みたいと思っている。単純に、良いものが作れたな!と思う回数を多くしたい。自分の引き出しの少なさは最近痛感しているので、インプットを頑張れたらいいなと思う。田舎は展示などを見る機会が少ないのが難点。

まだほんのちょっぴり明日以降に期待してはいるけれど、気持ちの切り替えは早い方が自分のためになるということを前回で学んだので、切り替えていきたい。仕事、がんばろう。