インプット

ここ最近、というか3月に入ってから鬼のように忙しく、ぼーっとしている時間もなく連日仕事に追われ続けていた。じっくり考えるよりも短期間でクオリティーを求められる仕事が多く、それをひたすらこなし続けていた。

今週の半ばあたりからメンタルが疲弊してきたのか、急に「ディズニーが見たい」という謎の欲求が出てきた。見たいというより夢の国の世界に逃げたいという逃避願望のようなものだろうか。仕事は楽しい。自分のやりたいことを仕事にしているのだから嫌いになることはない。しかし忙しすぎて何かを見失っている気がする。

心に余裕のない今こそディズニーを今見るべきなのだ、という根源の欲求のようなものが膨れ上がっていき、中学生の時に初めて行ったTDLの風景が脳裏に蘇った。今あの世界に浸りたい。以前見たシンデレラをもう一度見直そうかな、とぼんやり思っていた時だった。

調べ物をしていると「メアリー・ブレア」という人物に辿り着いた。ディズニースタジオに所属し、シンデレラや不思議の国のアリス、眠れる森の美女の色彩設計を担当した女性アーティストだ。イッツ・ア・スモールワールドのデザインも担当している。彼女の作品を見て、「自分が好きなディズニーの色の世界はこの人が作っていたのか」と驚いた。

稲妻が走ったように彼女の画集を調べ、ネットで注文した。日本で開催されたメアリー・ブレア展の図録ではなく、アメリカで出版されたわりと分厚めの画集だ。YouTubeで紹介されているのを見て、「見たい絵が全部詰まっている!」と思い即購入した。

それからというものメアリー・ブレアの絵をひたすらネットで見て、「さらに足りないものがある」と思い、以前見た時に美しすぎて見入ってしまった「眠れる森の美女」の背景美術が見たくなり、ディズニー・アート展の図録の中古品を購入した。

どちらもまだ届いてはいないが、久しぶりに自分のインスピレーションの根源を思い出し、心が沸き立ってきた。工数をかけられず短期間で仕上げなければならないデザインでは、ついつい効率的なTipsやストックサイトにある素材ばかりを求めてしまいがちで、自分で見たものから何かを想像して作るという原点を忘れかけていた気がする。

自分は切羽詰まって買う必要がある時以外あまり同業の人のデザイン本を買わないのだけれど、それには理由があって、人が作ったデザインから得る刺激は二次的だからだ。もちろんXやインスタなどで人の実績を見るしいいねもするけど、そこばかり見ていると「デザインに憧れて作ったデザイン」になり、視野が狭まってしまう。もちろん優秀なデザイナーの人はインプットの方法も優れていると思うので、そうはならないとは思うのだけれど、自然の世界から得る色遣いや、自分が見た映画や文学・音楽から得られるものはやはり大きいと思っている。

やはり出力ばかりし続けていると疲弊してくるのだと思う。野菜を食べていないと野菜が食べたい!と思うように、インプットが足りていないと脳が訴えてくるのかもしれない。人間の体は不思議だ。